2017年12月 7日 (木)

心地よいリズムで垂直に並ぶ色彩

 港に停泊する赤い帆のヨット。制作された翌年となる1896年に開催された自由美学展に出品された本作に描かれるのは、フランス南部プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏の保養地サン=トロペの小さな港の風景である。
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 心地よいリズムで垂直に並ぶ色彩。規律正しく配置されたかのように心地よいリズムで垂直に並ぶ色彩は、陽光の生み出した光の効果や、明瞭な光輝性、さらに強まる色度によって絶妙な調和に満ちている。
 サン=トロペの港の美しい街並み。本作に見られる非現実的ながら美しさと心象に溢れた展開は、スーラが提唱し、画家が決定的に影響を受けた科学的根拠(色彩学)に基づいた新しい描写理論から、それ以前のクロード・モネやギヨマンの典型的な印象主義的描写法への(ある種の)回帰とも考えられる。

2017年11月27日 (月)

ダビンチ作品に510億円

  イタリア・ルネサンスの巨匠レオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci)作とされる約500年前の絵画「サルバトール・ムンディ(救世主、Salvator Mundi)」が15日、米ニューヨークで競売に掛けられ、美術品の競売で史上最高額となる4億5030万ドル(約510億円)で落札された。競売大手クリスティーズ(Christie's)が発表した。
 作品は、ダビンチが1500年ごろにイエス・キリスト(Jesus Christ)を描いたと考えられている。長年、贋作とみなされていたが、2005年に米国での競売の際に本物と鑑定された。その後、2011年に英ロンドンのナショナルギャラリー(National Gallery)で展示されて話題を呼んだ。
 現存するダビンチ直筆の絵画作品は世界に20作もなく、他は全て美術館などの施設に所蔵されている。
 出品したのは、ロシア人の富豪でサッカー・フランス・リーグASモナコ(AS Monaco)の会長を務めるドミトリー・リボロフレフ(Dmitry Rybolovlev)氏。作品はモナコのスイス人美術商イブ・ブービエ(Yves Bouvier)氏から1億2750万ドル(約140億円)で購入したが、後にブービエ氏が2013年に競売大手サザビーズ(Sotheby's)の競売で8000万ドル(約90億円)で同作を落札していたことが判明。リボロフレフ氏は詐欺に遭ったとしてブービエ氏を訴えていた。
 この日の競売では18分間にわたって激しい入札合戦が繰り広げられた。これまでの美術品の史上最高落札額は、やはりクリスティーズが手掛けた2015年のオークションで20世紀の巨匠パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の油彩画「アルジェの女たち バージョンO(The Women of Algiers, Version 0)」が記録した1億7940万ドル(約200億円)だった。今回はそれを大幅に塗り替えた。

2017年11月17日 (金)

ドン・キホーテ

  近代絵画の先駆的存在の画家のひとりアドルフ・モンティセリが最晩年に手がけた傑作『ドン・キホーテ』。

  本作はスペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスが17世紀初頭に書き上げた、世界的に著名な騎士物語小説≪ドン・キホーテ≫を典拠に得て、同小説の一場面の中から最も有名な場面である≪風車への突入≫を描いた作品である。
  モンティセリはオルセー美術館が所蔵する『ドン・キホーテとサンチョ・パンサ』や『牛の番人(ドン・キホーテ)』を始めとし、≪ドン・キホーテ≫を画題とした作品を数多く手がけているが、本作には1870年代以降、画家が獲得した独自の作風(絵画様式)と、(本作が制作された)晩年期に画家が最も得意とした雅宴画風の趣きが良く表れている。
  画面右側に配されるドン・キホーテは疲弊しうな垂れる馬に跨り、丘の上の風車へと向かっている。
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2017年11月 7日 (火)

床の鉋かけ(床削り、床に鉋をかける人々)

 

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 印象派を代表する画家ギュスターヴ・カイユボットが手がけた最も有名な作品のひとつ『床の鉋かけ』。
 1876年に開催された第二回印象派展に出品された作品の中で最も重要な作品のひとつとなった本作に描かれるのは、新居の床を削るために鉋をかける三人の下層階級の労働者の姿で、極端とも言える程の遠近法による場面展開や自然主義的な現代性、幾何学的な画面構成などカイユボット独自の表現様式が随所に示されている。
 『床削り』、又は『床に鉋をかける人々』とも呼ばれる本作には、上流階級出身である画家が労働者階級の者を描くという、一見、矛盾のようにも感じられる画題が描かれているが、クロード・モネやルノワール(両者は労働者階級出身)とは異なるブルジョワ(富裕者)階級ならではの労働者に対する新鮮な視点によって描かれる場面表現は、第二回印象派展出品時、観者に衝撃を与えたと伝えられている。なお別の視点と構図から展開した同主題の作品もある。

2017年10月28日 (土)

JFK暗殺文書を公開、一部は機密扱いのまま

米国立公文書館は26日、ジョン・F・ケネディ元大統領の暗殺に関してこれまで機密扱いだった米連邦捜査局(FBI)や中央情報局(CIA)などの記録2891件をウェブサイト上で公開した。
トランプ大統領は直前になって、ケネディ元大統領の暗殺に関する記録の全面公開は見送る方針を表明。国家安全保障機関からの要請を受け、一部の記録は編集されると発表していた。
米政府高官によると、約300件の文書については、国家安全保障や法執行および外交関係上の懸念から、今後も非公開のままとする。
一部の情報を非公開としたことについてトランプ大統領は、「我が国の国家安全保障に取り返しのつかない損害が及ぶ事態を容認するよりも、そうした編集を受け入れるしか、選択肢はなかった」と弁明している。
ホワイトハウスは、トランプ大統領が情報機関に対して「前例のない透明性を要求」し、「編集を最低限に抑える」よう求めたと説明した。
トランプ大統領が一部文書の非公開を決めたことで、今後もケネディ元大統領暗殺を巡る陰謀説は消えないまま残る見通しとなった。事件に関する捜査結果に疑問を投げかけ、政府が事実の隠蔽に関与したとする説に火が付く可能性もある。
米政府高官によると、今回公開が見送られたのは、情報収集活動や法執行に関する具体的な内容が記された文書で、暗殺事件の捜査にかかわった人物の身元や、捜査当局への情報提供に果たした役割などの情報が含まれるという。
さらに、捜査にかかわった外国の連携組織についての情報も含まれている。
「大統領は、公開を延期するよう要請した機関から理由を聞き、そうした情報は保護する必要があると判断した」と当局者は説明する。
一部情報の非公開を求めた機関は来年3月12日までに、その情報が非公開基準を満たす理由について説明した報告書を提出する必要がある。
基準を満たさないと判断された文書は、同年4月26日までに公開を義務付けられる。

2017年10月18日 (水)

ニースの港

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  印象派の女流画家ベルト・モリゾの代表的な風景画作品のひとつ『ニースの港』。

  本作は画家が娘ジュリーの病気療養として滞在(1881-1882年)したフランスの南東部に位置する都市で、温暖な気候でも知られる≪ニース≫の港を描いた作品である。娘ジュリーが言葉に残しているよう、船(ボート)の上から港の方を見た視点(その為、波の影響により画面が僅かに右へ傾いたと考察されている)で描かたことが知られている本作は、画面の2/3が海面で占められており、如何に画家が船の浮かぶニースの海面の描写、表現に興味を惹かれ制作されたのかが示されている(それは画面左上へささやかに配される空の描写にも表れている)。

  特にモリゾ独特の荒々しく自由闊達な筆触による波の表現や、水面に映り込むニースの街並みや風景の抽象的表現は印象派の画家の中でも非常に前衛的であり、かつ類稀な独自性をも兼ね備えている。

2017年9月21日 (木)

陽光が射し込み光り輝く家の壁

 中央へ集まる観る者の視線。シスレーはアルジャントゥイユに滞在していた時に4点ほど作品を制作しており、本作もその一例であるが、中央に焦点が集まる一点透視図法を用いた遠近感が、観る者の視点を自然と画面の中心へと向けさせる。

 陽光が射し込み光り輝く家の壁。この画面全体の光の描写や複雑な色彩を帯びた空の色彩表現は、この時期の作品の中でも特に秀逸の出来栄えを示している。なおワシントン・ナショナル・ギャラリーにアルジャントゥイユを描いた別の作品『アルジャントゥイユのエロイーズ大通り』が収蔵されている。
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 遠景に見えるノートルダム聖堂(教会)の尖塔。本作はシスレーが当時パリ市内で起こったパリ・コミューン(労働者階級の自治による民主国家)を避けルーヴシエンヌやアルジャントゥイユ、プージヴァルなど郊外へ疎開していた頃(1871-74年)に制作された約130点の作品の中のひとつである。

2017年9月11日 (月)

何度も注意したのに妻は…

  近年の中東イスラム圏において最も厳格、まさに右派のムスリムを謳う男たちが支配しているのがサウジアラビアである。2015年になってやっと女性の地方議員が誕生したが、国政参加はまだ認められていない。男尊女卑が半端ではないこの国から飛び出したある夫婦の離婚の話題が今、世界のメディアの関心を集めているようだ。パキスタンの『The News International』もそれを伝えた一社だが、封建的で男尊女卑の結婚観がよく非難されるパキスタンの人々もこの離婚の話題には呆れているという。
  国民のほとんどがイスラム教徒とはいってもトルコ、エジプトなどはマイルドイスラムとして欧州の文化をかなり取り入れており、インドネシアやイスラム教が国教のマレーシアでも旅行中にムスリムからの強い拒否感を受けることはまずない。一方、古くからのイスラムの教えや慣習にあくまでもこだわるサウジアラビアでは女性は運転もできず、ほとんどの学校で体育の授業に参加できない。そのうえ家族以外の男子、男性と会話できないため縁談は親や兄、親類が持ってくる。理不尽な理由で常に抑圧されている女性たちを案じ、国際的な人権擁護団体が常に監視と抗議行動を繰り返している状況だ。
  これだけ女性の権利を奪っておきながら一夫多妻制まで認めているこの国では、男性の浮気はむち打ちで済むが女性のそれは死刑か終身刑となる。このたびの話題はまさに男性天国ともいえるサウジアラビアの日刊紙『Al Watan』が伝えたもので、夫(氏名などは明らかにされず)は「私が繰り返し注意したにもかかわらず、妻はそれを守らなかった。だから離婚を決めた」と主張しているとのこと。それは妻が彼の横や前を歩くこと。女は男の数歩うしろを歩くものと信じてやまない夫にとっては我慢ならない行為であったそうだ。

2017年8月31日 (木)

アルジェのアラブの祭日(モスク)

  印象派の巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワールを代表する風景画作品のひとつ『アルジェのアラブの祭日(モスク)』。

  本作は画家が1881年に旅行したアルジェリア滞在時に同地で制作した数点の作品の中の一枚で、やや高位置の視点からアラブ(アラビア)の祭りの様子を描いた作品である。
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  本作はルノワールが多大に影響を受けていたロマン主義の大画家ウジェーヌ・ドラクロワへの敬意や献辞を示した作品であるものの、画家自身はフランス美術界がドラクロワを称賛するようになって以来、信望者の画家たちが大挙として訪れていたアルジェの雰囲気に多少、辟易していたようである。
  しかし、それでも本作の燃えるように強烈な陽光の描写やアルジェ独特の風土感、喧騒とした祭事の表現はルノワールの画家としての偉大さが良く表れている。

2017年8月21日 (月)

ルノワールの作品の中でも本作は特に注目すべき作品として重要視されている

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 特に観る者と視線を交わらせる女性の豪華な白黒の縦縞模様の衣服や上品に輝く(何重もの)真珠に首飾り、アクセント的に彩りを添える胸元の(おそらく隣の男から贈られた)薔薇の花束などは女性の優雅な美しさを強調するだけでなく、女性そのものの魅力を観る者により強く印象付けさせることに成功している。
 また女性の背後でオペラグラスを上空へ向ける男は舞台を眺めるのではなく、おそらくは女性又は有名人が座る他の桟敷席の観客を眺めている。これらの行動は当時の近代生活における日常を見事に描写したものであり、その点でもこの頃のルノワールの作品の中でも本作は特に注目すべき作品として重要視されている。

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